非営利ボランティア団体未会

高槻市 非営利ボランティア団体 未会

未会(ひつじかい)とは大阪府高槻市を中心に活動する非営利ボランティア団体です。

高槻市春日町の西教寺、堀川住職と未会吉田会長との学習支援ボランティア、シープハウス対談

会長の「あの人と話したい」シリーズ第一弾

堀川憲慧×吉田錦司

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皆さんこんにちは、未会広報室室長の向井です。

2016年の11月より始まった学習支援ボランティア、シープハウスですが、未会の取り組みの中でも、一際輝きを放っているように感じます。子ども食堂、学習支援ボランティア、子の貧困問題など、世間では様々な環境の変化がある中で現代版の寺子屋としても注目されるであろう、この取り組み自体が一体どういう経緯で始まったのか、またそこにどんな想いがあるのかに興味が湧いてしまいました。

ということで学習支援ボランティア、シープハウス立案者の未会、吉田錦司会長と、シープハウスの会場となっている西教寺の堀川憲慧住職のお二方の対談を実施、記事にまとめました。シープハウスにこめられたそれぞれの想いをぜひご一読あれ。

学習支援ボランティア、シープハウスの詳細については下記のリンク記事をご確認ください。
学習支援ボランティアシープハウスについて

年前から少しずつ住職と話しあって、半年ほど前に実現にこぎつけました

 

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インタビュー日はあいにくの雨模様です。高槻市春日町にある白い壁がきれいなお寺、西教寺から子供たちのにぎやかな声と暖かな明かりが溢れています。本堂にお邪魔させていただき、まずは本堂に手を合わせます。ほどなくして住職の準備が整い、奥にある応接間にて対談が始まりました。

インタビュアー(以下、-)今日もたくさんの子供たちが集まっています(この日は英会話の授業が行われていました)が、この現代版の寺子屋とも言える取り組みであるシープハウス。このシープハウスを企画されたのは吉田会長なんですよね?

吉田会長(以下、吉田) はい。1年前から少しずつ住職と話しあって、半年ほど前に実現にこぎつけました。


お寺を選ばれたのには何か理由があるんですか?

f:id:hitsujikai2010:20170318215553j:plain吉田 まず子供たちに、自分の住む地域に西教寺という歴史のあるお寺が存在しているってことを知ってほしかったということです。使うならばと住職からもリクエストがあったんですけど、ただただ集まって勉強するというのではなく、毎日に感謝するということもしてほしいと。具体的には、毎回本堂にしっかりと手を合わせるということなんですけれども。こういう人として日々に感謝することの大切さも子供たちに感じてほしいという想いもあって西教寺にお願いしました。

本堂に手を合わせるってお寺ならではの響きがあっていいですね。


住職 手を合わせることが大切だと言ったのには理由があってね。この話を吉田さんから聞く前から、今の日本の教育には「育てる」が欠けているんじゃないかと考えることが多かったんです。寺子屋というのは、誰もが字の読み書きや数の計算という基本的なことを学ぶことができるものでした。これに加えて寺という場所というか、環境というか、そこに住む住職や教える人の人格といった「徳」が、学ぶ人たちに与える影響もきっと大きかったんじゃないかと思います。これらの要素がうまく合わさって、寺子屋では教育の「教える」ということと「育てる」ということが、同時に行えていたんじゃないかなと感じます。この育てるという部分が現代の教育には欠けているなと強く思います。

知識があれば教えられるわけではないということですね。

f:id:hitsujikai2010:20170318213825j:plain住職 そう。教えることも育てることも同じことなんです。どっちも徳がないとできない。


今のような資格制度もなかった時代では、確かに教える人の人格や人望や、子供たちに対する想いみたいなものが重要になりそうです。

住職 今のようにその人の人格がどうであれ、資格さえ取れれば先生になれるような時代ではなかったわけですからね。寺子屋が日本の教育の基礎となった訳ですが、明治以降の組織化された教育のお陰で、自由が増えすぎてしまった。その結果として「教える」ということだけが行われるようになってしまったんじゃないかとも思っています。最近も加古川であったような、いじめを苦にして子供が自殺する事件が後を絶たない。これは人の心が育っていないからではないでしょうか。だからいじめられている人は逃げ道が見つけられず、いじめる人はその行為自体を悪いとも思わないようになってしまったんだと思いますね。

なるほど。いじめが悪いということもですけれど、逃げ道があるって大切ですよね。

住職 人の心を育てるという意味においては、寺子屋のみんなが集まる事も大事だし、仏さんに手を合わせることも同じように大切だと思います。みんなで「畳の上で学ぶ」という環境は欠かせないんじゃないかなとも。もしこの取り組みによって、こういう考えを実現できるのならば、何も無駄なことはないと思い、吉田さんの提案を受けて場所を提供することを決めました。

子供たちの学びの場としての原点回帰を感じさせますね。

住職 そもそも寺子屋というのは、今の学校のように年齢で学年を決めて、一律で何かを学んだというのではなく、十把一絡げに集まって、同じ場所でそれぞれの年に合わせてそれぞれが学んでいた場所。年齢も性別も関係ない空間で時にふざけ合ったり、時にけんかしたりしながら、他人との関係性というか、人間関係そのものを学んで、人としてしてのけじめがついていったんですよ。
※十把一絡げ・・・いろいろなものを雑然とひとまとめにすること。一つ一つ取り上げるほどのことはないとして、まとめて扱うこと。

教える人が育てていたというわけではなく、集まることで育つこともできたという側面もあったと。

住職 そうだね。僕が小さいときなんかは、小学生から中学生までが一緒に遊んでいた。今では行かなくなったけれども、淀川に泳ぎに行くとなったら、地域の大人が付き添ってくれた。そんな分け隔ての無い地域という交流の中で、年上を敬う気持ちも芽生えたし、年の離れた人との付き合い方も学ぶことができた。今は、こういう交流は、ほとんどないんじゃないかな。

f:id:hitsujikai2010:20170318212012j:plain吉田 全くないですよね。家族形態の主流が、核家族化となったということも関係あるのかもしれませんが、自分の家庭の中で様々なことが完結してしまって、他人と触れ合うということが極めて少なくなりました。このシープハウスという活動では、そういった交流の狭さみたいなものも払拭したいとも考えています。特に全国的にも問題視されている「中1ギャップ」というものがあって、この地域でも叫ばれていることなんですけど。中学に入って突然、他の小学校の子供たちと合流したり、先輩後輩という位置が急に目の前にできることで人間関係にストレスを感じるというのが「中1ギャップ」なんです。狭い人間関係しか知らないと、そうなるだろうなと思うし。この「中1ギャップ」という問題に対しても、シープハウスに通ってもらうことで解消できると考えてます。それこそ中学に入ったときに、シープハウスで顔を合わせて、知っているというお兄ちゃんやお姉ちゃんがいるんですから、それだけでも助けになるはずです。今は、こういう機会を作らないと、年齢を超えた交流ができるような場がないんですよね。

このシープハウスのような関係性が、全国の地域にあれば、その問題の解決も難しいものではないように感じますね。

住職 家族の中でしか年上や年下、大人と触れ合わないのも問題だけれども、家族という枠組みの中でも、親が勉強させることだけに集中していて「いい大学に行け」「もっと勉強しろ」ばかりに熱を込めすぎているんとじゃないかな。願いとしては大事なことだし必要なことではあるけれども、その些細な願いのせいでそれ以上にもっと大きなものを子供は失っている気がするね。

シープハウスが取り戻せることっていうのが、想像よりもたくさんあるような気がします。

吉田 地域の枠組みでの触れ合いというか、年上や大人との触れ合いという意味でもシープハウスはやっぱり重要なんだと思うし、何より西教寺で開催できてよかったなと思うんですよね。子供たちも「お寺」っていうのが、凄い貴重な建物であることや、大きな存在であることを肌で感じていますし、住職についても普段接する大人とはまた違った存在であることを何となく頭で理解できている。子供たちにとっては、お寺というもの自体が何もかも新鮮なんですよね。本堂になんてよっぽど用事がないと、入れないですし。地域を歩いていて住職に声をかけられたり、かけたりっていう繋がりも、きっと嬉しいと思うんですよ。

f:id:hitsujikai2010:20170318212503j:plain住職 自分がゴミ捨てにいくとき、通学途中の子供たちの中にもシープハウスに通ってくれている子なんかは挨拶もしてくれるしね。

吉田 いいですよね。地域という関係性がそこに生まれてるし、成長していく過程でも、この関係は貴重なものになると思う。

今日参加している子供が「寺のボスと言えば住職やんか」って話しているのを聞いて、子供なりに理解してるんだなと感じました。

住職 昨今は、大人が怒らなくなったというのは、よく言われるけれども、大人も子供と接する機会が減ってるわけですから、怒ること自体、難しいということもある。地域の大人が地域の子供を我が子のように思って、育てることが出来ていた時代もあったけれども。昔は、悪さをしたら近所の大人にきつく怒られたもんですよ。

吉田 シープハウスに来る子供たちのなかでも、ちゃんと家で怒られてるんだろうなという子と、怒られたことないんだろうなという子供はすぐわかりますね。怒られ慣れていないというか、だからこそけじめがつかないというか。だから、子供が悪さしたらその時は僕がめちゃくちゃ怒るんですけどね。

住職 憎しみを持ったものでなくて、本気でやめさせるという気持ちで怒るのは大切なことだからね。

吉田 こういう住職が居てくれるからこそ西教寺で、できてよかったなと本気で思いますよ。シープハウスをやるならここだって思いもありましたけれど、そもそも住職に断られていたら、こんな取り組みもなかったわけですし。子供たちもお寺だから感じられることっていうものもあるわけで、その中で人らしいとうことを学ぶというのも大切なはずです。色んな人はいますけど、人間らしい気持ちを持っている人がやっぱり一番だと思いますしね。

基本的なことで申し訳ないのですが、西教寺はどれぐらい歴史があるんですか?

住職 徳川のころからだから400年ほど。それでもここらでは新しいほうですよ。古いとこなら大塚町には、親鸞聖人のお弟子さんが建てたと言われる寺もある。この西教寺は、この辺りに家が7、8件のころに建てられたと聞いているけれども。

誰が建てたんですか?

住職 権力のある方々が建てたお寺っていうのもあるけれども、基本的に西教寺のような浄土真宗のお寺の多くは、庶民が集まって建てた寺っていうものが多いですね。親鸞聖人自身が寺を持たなかったということもあるかもしれないけれども。庶民が建てたからこそ、地域の真ん中にあって、寄り合い所のような役割も担っていただろうし、今でいう公民館のような存在でもあったはずです。もちろんお葬式をあげることもできた。普通に考えても、お仏壇が各家庭にあるような時代ではなかったからね。お寺に皆で集まって説教を聞いて、仏様に手を合わせてってしてたんでしょう。

吉田 西教寺もそうですけど、お寺は今よりも庶民に近い存在だったんじゃないかなとも思います。親鸞聖人自身がそういう方だったというのも本で読みますし。庶民の目線で話してくれたということからも想像できます。

今日は英会話が行われてますけれども、住職がシープハウスの子供たちに何か教えるということもあるんですか?

吉田 (平成29年)4月ぐらいになったら住職に短いお話しもしてもらおうとは思っています。

住職 話すのは苦手やから、短いお経をと考えているけどね(笑)

短くてもいいですよね。

f:id:hitsujikai2010:20170318213559j:plain吉田 だまされたらだめですよ(笑)住職は、むちゃくちゃ話すことが好きだから。でも、わざわざ遠くまで出向いて、知らない誰かの良い話を聞くよりも、地域のお寺の住職のお話しを聞くというのが貴重だと思いませんか。なんでも簡単に手に入る時代だけれども、こんな貴重な話を聞ける子供は、あまりいないと思いますよ。こういった経験ができる子供たちは、人として一つも二つもステップアップできるはずです。住職とか地域の大人と触れ合うことで勉強ではない、人として大切なことを学べると思うんですよね。


住職 その通りで、どんなに立派になっても、その人が冷たい心だったら、それはだめだと思いますよ。

なるほど。お二人の考えが合致していたからこそ、このシープハウスの活動がスタートできたというのが強く伝わってきますね。

f:id:hitsujikai2010:20170318215735j:plain住職 吉田くんの方がレベルが上やけどな。


吉田 僕はもう住職のことが好きなだけですし、こういう風に力を貸してもらって地域にとって必要なこと、当たり前のことをやりたいからやっているだけです。これからシープハウスをもっと地域に根付かせて、小学生が中学生になって、また新しい小学生がはいってきてという風に、触れ合う年代がサイクルできればうれしい。

まさに現代の寺子屋の完成ですね。

吉田 そうですね。住職にお力を借りながら、未会としても強く前に進めていきたいと思います。

素敵な思いが詰まったシープハウスがよくわかりました。今日は遅くまでお二人ともにありがとうございました。

2人 ありがとうございました。


シープハウスは子供たちが集まって学ぶ場であり、育つこともできる場所。ますますこの形が色濃くなって地域に欠かせない存在となる日も近いと強く感じました。また住職と会長の対談を実施し、今度はお寺と地域の関係性なんかも聞けたらなぁと感じました。ありがとうございました。

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